楽器屋さんでミニギターがずらりと並んでいる光景を見るとなぜかうれしくなってしまう。どんな音色のギターなんだろう、抱えたときのフィーリングはどうだろう、そんなことを考えているだけでとても楽しい。現在、各メーカーからいろいろなものが出ているが、その中から僕が気になっているミニギターを弾いた感想をちょっとだけ述べてみたい。Ｋヤイリのノクターン、マーチンのLXMリトルマーチン、テイラーのベビーテイラー、マーチン7-28、そしてギブソンLG-2 3/4の５種類ですべて14フレットジョイントモデルだ。






まず最初の１本はＫヤイリのノクターン。スケールは５７０ミリで上の３本の中では一番短い。しかしブリッジからボトムまでの距離があるためギター自体の大きさは３本のなかでは一番大きく音量も豊かだ。まず抱えてみて最初に感じたのは『軽い』ということである。音色は軽やかでピックング後の音の立ち上がりは早い。この心地よさはサウンドホールの位置に関係があるのかもしれない。乾いていて抜けの良い音色は材料のシーズニングにこだわるＫヤイリの特徴が現れているギターといえよう。ネックは太めだが手の小さい人でも握りやすい形状となっており、ボディは独特のひょうたん型でオリジナル度は高い。カラーは今回試奏したスタンダードカラーのほかにアンティークカラーのものが用意されている。

つぎはマーチンのLXMリトルマーチンだ。最近のミニギターブームの起爆剤となったギターである。ギターを抱えてみての第一印象は小さいボディのわりにはずっしりとした重量感だ。小さいボディにマッチした細いネックもノクターンとは対称的で面白い。ボディが小さいため中低音の抜けがなくこもるような音色だったが高音は粒のそろったきれいな音だった。

テイラーのベビーテイラーはボディのクビレが小さいドレッドノートタイプのボディだ。LXMリトルマーチンがスモールボディタイプのギター（例えばマーチンOOO-28）を小さくしたようなデザインだとすればベビーテイラーはラージボディのマーチンD-28を小さくしたような印象だ（ちょっと極端な例えではあるが）。ベビーテイラーはラウンドバックを採用し音が前へ出る工夫もされているので音量音圧もある。さら抱えた感じが一番しっくりときたのもこのベビーテイラーだった。ミニギターは普通のギターのように膝にのせて抱えるとポジション的に窮屈になりがちである。だから抱えたときのこのフィーリングはミニギター選びの重要なチェックポイントだ。さらにネックを握った感触も良く、肌触りもすべり具合も手の小さい僕にはちょうど良かった。このベビーテイラーはトップがスプルースのものとマホガニーのものの２種類がラインナップされている。
僕の好みをいえば、音色はノクターン、サイズとデザインはLXM、演奏しやすさでベビーテイラーといった感じだろうか。ちなみに実勢価格はノクターンで６万円前後、LXMで３万円台半ば、ベビーテイラーは５万円前後となっている。（※価格はお店によってまちまちなのであくまで参考です。）








マーチンの7-28とギブソンのLG-2 3/4。どちらもあまり店頭ではお目にかかれないギターだ。7-28はカタログにはのっていないモデルで３０本限定で注文生産されたという話であった。D-28をそのまま小さくしたというこのモデルは一般的なミニギターとは違う。弾いてみるとそれはまさにマーチンの音色だ。リトルマーチンやバッグパッカーはマーチンブランドとはいえレジャー的要素の強いギターだが、この7-28は楽器としてのクオリティを追求しているミニギターだ。ミニギターではサイズダウンのために犠牲にされがちなブリッジからボトムまでのスペースも7-28はたっぷりとられているため、豊かな音量も確保されている。

もうひとつのLG-2 3/4はどうだろうか。１９５０年代には多く作られていたLG-2 3/4を再現したアーロ・ガスリーシグネチャーモデルだ。アーロ・ガスリーの父はあのウディ・ガスリーである。このギターのネックは細く全体もコンパクトだがギブソンテイストを満載した造りのギターで音色はシャリシャリとして僕好みであった。抱えたときのフィーリングと弾きやすさ、デザインともに素晴らしいギターだ。7-28とLG-2 3/4を弾き比べてみたが僕的にはLG-2 3/4が好みだ。

この２本のギター、ともに絶対数が少ないので弾き比べることができたのは幸運だった。ちなみに店頭でみた価格は7-28が４０万円強。LG-2 3/4が２５万円強とどちらも高価なものであった。

さて、今回のミニギター弾き比べ。多分に僕の好みが反映されているので興味を持たれた方は自分で試奏してみてはどうだろうか。音色やフィーリングの違いを感じるのはギター弾きにとってはきっと楽しい時間となるだろう。