木々の葉があふれるほどに緑色に輝いていた季節は過ぎ去り、ところどころ秋の色に染まる代々木公園。ベンチに腰を下ろし噴水を眺めながら小一時間ほどギターを弾いたあとで、代々木上原方面へと足をのばしてみた。地下鉄東京メトロの千代田線、代々木公園駅の隣は代々木上原駅なので、井の頭通りをぶらぶらと歩けばすぐである。代々木公園から山手通りを越えて代々木上原へとつづくこの道、今ではきれいに整備され広々としているが以前は山手通りを越えると道が狭くなりそこをバスや大型車も行き来していた。上京したての頃、東京の道の狭さにびっくりしたことを覚えている。

代々木上原の駅からみると井の頭通りを挟んで建っているのが今回訪れた古賀政男音楽博物館だ。かつてこの地に音楽村をつくりたいと願い、自らの居を構えた古賀政男の邸宅跡に建てられたという。今でこそ大通りに面したこの場所も氏が生活をしていた頃はきっと静かな場所であったのだろう。

ミュージアムは地下1階にカラオケスタジオと音楽情報室。音楽情報室では生まれた年のヒット曲を聴くことができる。1階にはけやきホールという音楽ホールがありコンサートなどのイベントも行われる。2階は大衆音楽の殿堂。日本の音楽に功績のあった作曲家や作詩家の紹介や昔のレコードジャケットなどが展示されている。昭和を感じさせるレトロなイラストやタイポグラフィーのジャケットはグラフィックデザインとしても興味深い。そのジャケットデザインをコラージュして作られたのが建物の入り口にあったクリーム色のポスターだ。

2階から3階へはなだらかスロープになっており、スロープは石畳を模している。ここは旧古賀政男邸の外門からから邸内入り口の門扉まで続いていた石畳の坂道をイメージして造られているらしい。スロープは狭いトンネルになっていてその向う側には明るい光が見える。そこには邸宅のミニチュア模型や屋敷の一部が移築されていて実際に古賀政男が生活し、創作活動を行っていた場所に触れる事ができるのだ。広い庭に囲まれた大きな屋敷であった事がうかがい知れる。ほかにも彼にまつわる品々が展示されており『古賀メロディー』を楽しめる一角も設けられている。僕が一番興味をそそられたのは展示されていた彼の愛用していた楽器たちだ。ここに展示されているマンドリンやギターからあの『古賀メロディー』が生み出されていったと思うと感慨深いものがある。

正直にいってしまうと、僕は古賀メロディーを体験した世代ではない。ニューミュージックやロック、ポップスを聴きながら大人になった世代の一人ではあるが、それでも彼の生み出した音楽に触れたことは少なくない。それだけ今に歌い継がれる名曲が多いということだろう。僕が古賀政男という人物に興味を持ったのは片岡鶴太郎が彼を演じたドラマを観たのがきっかけであった。現代に語り継がれる偉大な音楽人であったことは間違いのない事実だ。さらに彼は王貞治につぐ史上二人目の国民栄誉賞を授与された人物なのだ。

時間のある人は都心の真ん中にあるこのミュージアムを訪れてみてはどうだろうか。ここは日々の生活や喧騒を忘れてタイムスリップできる不思議な場所だ。音楽に興味がない人にも昭和レトロなレコードジャケットは一見の価値はあるだろう。


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古賀政男音楽博物館
November 2005
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